2013年1月2日水曜日

「気をつけろ坊や。これは危険な遊びだ」(『ゴールデンボーイ』(1998)再見)


ブライアン・シンガー監督、ブラッド・レンフロイアン・マッケラン出演。スティーヴン・キング原作。原題は"Apt Pupil"(飲み込みが早い生徒)。この邦題、よくつけたものですね。成功してると思います。

…ナチスに興味を持った、歴史が好きな高校生のお話。とある老人が元ナチスの戦犯であると突き止め、彼の家に押し掛けて、当時の話をするようせがみます。老人は当然ながら否定し、「市民権をとったアメリカ国民だ」と言い張ります。すると高校生は、老人が戦犯本人である証拠を集めていることを持ち出し、言うことを聞かなければ警察に通報すると脅迫します。いやいやながら話を始めた老人。互いを支配下に置こうとする二人のパワーゲームが始まります。繰り返されるこの「お話」は、互いのなかの「ある性質」を目覚めさせていきます。

レンフロ君はその後わずか25歳で亡くなってしまったので、今これを見ると少しつらいです。でも、このあどけなさが残る顔がとても効果的。最初に老人の家を訪ねて「話をしないと通報する」と脅したあと、老人が「なにか飲み物はいるか?」と聞くシーンが印象的でした。彼はそれまで脅迫していたのを忘れたように「ミルクある?」と言うんです。…ただの好奇心で元ナチスの老人のことを調べあげ、指紋まで取るストーカー顔負けの行動と、相手の恐れや反撃を考える様子もなくミルクを頼む無邪気さコントラストが見事でうなりました。この子は自分がやってることの恐ろしさも、相手にしている老人が現実の人間である恐ろしさも自覚していません。それが見事に表現されているシーンでした。

このちぐはぐさが一番現れるのが、老人にナチスの制服を着せようとする場面。着せかえ人形かコスプレ並みの感覚で無邪気に持ってきます。この過去を隠し、おそらくはおびえながら孤独に生きていた老人は、当然ながら激怒します。でも弱みを握られている以上、言うことを聞くしかないんです。この二人の関係の倒錯ぶりが素晴らしい。そして「やられっぱなし」ではない老人
制服を着て行進の所作までやらされててるうちに、老人がだんだんおかしくなっていく様子がこれまたお見事。これは言葉では表せません。ぜひ未見の方はご覧くださいませ。

昔見た時は、やたらレンフロ君が脱いでいるのが「監督趣味出し過ぎ~(笑)」(シンガー監督はゲイ組合の方なので(^^;))とか笑っちゃったんですが、こういうシーンがただのサービスでは終わらないのがシンガー兄貴。シャワー室でユダヤ人収容所を妄想するシーンはわかりやすいですが、意味もなく(?)裸(ぱんつ一丁)で寝ているシーンもじつは意味があって。老人から聞いた話のせいで怖い夢をみるシーンなので、別にパジャマだっていいんですが、ここが裸だと…イメージとして「この子はこういう話で興奮する」のだと伝わってくるんですよね。(なんかどこかの21世紀探偵を思い出しますよ~(笑))

こういう言外のというか、行間に込めるような表現が、この監督とてもうまい。この映画では特に、随所にゲイのモチーフがちりばめられていますが、これも効果的だと思います。(原作は読んだことがないので、これが脚色によるものか、原作にもあるものかはわかりません。でもシンガー監督のファンなので個人的にはどっちでもOKです。…余談ですが、これの前のシンガーがブレイクした作品『ユージュアル・サスペクツ』は、評判ほどおもしろく感じなかったんです。そこで抑えていたものが『ゴールデンボーイ』ではいっきに噴出している感じが。…いや、あちらも今見るとまた違って見えるかもしれませんが…)

映画って、いろんなシーンに密かに官能性を潜ませる技術、みたいなものがけっこう大切だと思うん方なんですが、「その感覚」がもともとないと、こういうアイデアは出てこないかも…と思いました。(三本目のX-MENが、シンガー監督の1、2作目に比べて著しく魅力を欠いていたことが思い出されます。全裸にボディペインティングで女性キャラのミスティークを撮っていてさえ「色気」がなかった。奇妙なことに、シンガー監督は女優さんを魅力的に撮るのもうまいんですよね。すごくきれいに、かっこよく撮ります。色合いや画面の肌理自体が違って見えるので、シンガー監督と組んでる撮影監督の技術も高いのだと思います
80~90年代あたりに、「おおっ」と思う映画が調べてみるとほとんどゲイ監督の作品、という時期がありましたが、ある種の審美的感覚があるんだろうな。(そのへんが腐女子の嗅覚にも利害一致なわけですね!(笑))

「サーの称号を持つ美老人ゲイ俳優」マッケランはこのあとX-MENシリーズでも監督と組んでいますが、この二人のタッグではこれが最高傑作では、とさえ思えます。(思えば、マッケランがX-MENで演じたマグニートーが念力を発現させたきっかけは、ユダヤ人収容所に入れられた母との別れのシーンではありませんでしたっけ…?おもしろい流れです)
制服を着て一人鏡を見るシーン、そして「猫」のシーン…見事なドイツ語なまりと老け作り(当時まだ50代)、密かに持ち味である「あぶない感じ」が堪能できます。将校時代の写真として、ご自身のお若い頃の美しいお顔も拝見できます♪魔法使いガンダルフの華麗なる過去(?)の一つ、一見の価値ありです。未見の方は機会があったらぜひ♪

脇役では、やはりシンガー組の一人でX-MENでもおいしい上院議員をやったブルース・デイヴィソン『ゴッド・アーミー』イライアス・コティーズなんかも出ています。(出番少ないですが、コティーズとマッケランのシーンも見ものです!)
先が読めない展開と、主演二人のすばらしさ。テーマがテーマですし、「こわい」映画なので万人向けではないかもですが、シンガー監督とマッケランの「強み」が120%発揮されている作品だと思います。超おすすめ!です!





グチになりますが、マッケランの焼け木杭で再見したくなった作品が、ほとんど近所のTSUTAYAにありません。検索機で見たら、『スキャンダル』『ベント/堕ちた饗宴』はDVD化なし、『リチャード三世』、もレンタル用DVDがありません!リチャード三世なんか、今をときめくロバート・ダウニー・Jrも出ているのに。(すごく印象的でした!)ぜひぜひ手軽に見られるようにしてくださあい!(泣)


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