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2014/07/10

『ジェーン・エア』(2011) /ストリングスの切ない響きと、絵画のような空気感


有名小説のいくつかある映画化のうち、最近のミア・ワシコウスカマイケル・ファスベンダーのバージョンを鑑賞。不幸な孤児のジェーン・エアが、成長して住み込み家庭教師になった家で雇い主と恋仲になり…というあらすじだけ書くと「その時代のロマンス小説」の一言で片づけられてしまいます。(笑)ですが、なるほど読みつがれているのもわかるなあ…と思える「映画化」作品でした。



…じつはブロンテ姉妹ものは、なんとなく「自分向けではない」と思っているジャンル(?)の一つ(^^;)なんですが、今回のはすごく入り込めました。感情移入とは少し違うんですが。まずは
音楽がすばらしくて。この音楽の情感の魅力が、自分にとっては作品の半分を担っていた気がします。残念ながらトレイラーには使われてないようなんですが、ストリングスの、切なく美しいけどきりきりとするような、ジェーンの精神を表現してるような旋律がすばらしかった。この「特定の精神状態を表現する」ことにフォーカスして、それを拡大する…という表現手法は、古典芸術の風合いに近い気がします。

映像がまた絵画のようで。ミア・ワシコウスカ容姿(魅力的なのに素朴で、たしかに「美女」というタイプではないけど「妖精」と言われるのがぴったりな、不思議な容姿)と、特に室内シーンでの画面の色合いやライティングが、古い油絵のようでため息が出ました。この「絵」のなかで演じられるジェーンの姿が、音楽が表現する「精神」によって立体として浮かび上がる、という印象でした。ここも古典の手触りですね。

男優さんは、相手役がマイケル・ファスベンダーレンタルした理由の半分はもちろんこの方。(笑)原作を未読なので、ほとんどネタバレといっていい予告編(^^;)を見たときは、「もっとけしからんキャラクター」なのかと思ってました(笑)。ああいうなりゆきになるとは。…結末含めて、あまりに「女子にとって都合がよい夢物語」ではあるのですが。(終盤のエドワードが「ああいう状態」であることが、逆説的に、どれだけ「都合がいい」ことか!(^^;))

でも、その「都合がよすぎる」部分が浮かずに、「古典芸術のように」受け入れられるのは、やはり「音楽と“絵”」の素晴らしさと、主演のワシコウスカとファスベンダーのシリアスな説得力のおかげ…かもしれない。ストーリーにまとわりつく「絵空事感」より、「表現としてのすばらしさ」に目がいってしまうんです。とくにワシコウスカはすばらしかった!舞台劇的な「すばらしさ」ではなく、台詞はつぶやくような言い方ですごくリアル。「演じられてる」と意識しようとしてもできないくらいです。ほかのキャラクターはすべて、「役者さんが演じているんだ」と思い出せばそう見えるのですが、ジェーンはジェーンそのものに見えます。彼女の他の作品をあまり見ていないのもあるかもしれませんが、ほんとにこの方すごいと思いました!このキャスティングをした時点で八割くらい成功してるのでは。

ほかにジュディ・デンチも出ていて、脇を引き締めていました。(さらに脇ですが、幼少期に出てくるいじわるな校長先生は、『裏切りのサーカス』でレイコン次官をやってた方ですね♪この方けっこう好きだったので見られて嬉しかった♪)

そして、館を逃げ出したジェーンを救う牧師役がジェイミー・ベル!大好きなんですが、出ていると意識してなかったので嬉しい驚きでした!少し前に、ワシコウスカとカップルを演じた『ディファイアンス』を見たばかりだったので、「また彼女とくっつくの…!?」と一瞬思いました。(笑)(『ディファイアンス』は感想を書き損ねましたが、二次大戦時、森に隠れながらナチスに反抗したユダヤ人の集団と、それを統率した人の話。主演はダニエル・クレイグでジェイミーくんは弟役です)

この牧師は終盤、「インドに宣教師として赴任するので結婚して同行してほしい」、とジェーンに申し込むのですが…。原作のレビューを読んだら、このプロポーズがどういう本心なのか、というのが考察されていて興味深かったです。今回の映画では、「ジェーンに惚れている」のが先にあって、神に与えられた役割うんぬんは結婚を正当化する盾にしている、という感じが匂う演じられ方でした。あからさまではないんですけど。

でもこの結婚申し込みも、考えてみると「ラストをああいうふうに持っていく」ための仕掛けになってるんですよね。これでもし彼が、ジェーンが望んだように「兄妹として」インドにいってほしい、と言うような人だったら…ある意味女子の夢のキャラクターだと思うんですが。(女子の理想は恋愛相手ばかりとは限らない(笑))ここで彼がこういうことを言ってくれるから、そのあとがあるんですね。原作通りなのかどうか知りませんが、ここも都合がいいといえば都合がいい。(笑)

…この牧師はここまでずっと紳士的だったんですけど、どこかで豹変するんじゃないか、という風情があったんですよね…。だから終盤の声を荒げるあたり抑えていた本性が出たという感じでした。ジェイミーくんもうまいですね。大好きですほんとに♪この牧師は脇役なので、これまでどういう生活をしていたのかは、「一年前の自分は惨めだった」という台詞しか想像するよすががないのですが…原作では書かれているんでしょうか。メインストーリーと違うところに目がいってしまいましたが、原作も読んでみたくなりました。